「農作業」や環境づくりの「草刈り」、本業の方も忙しくしてますが「木工旋盤」の作品作りは続けています。
この夏からは、従来とは違う「仕上げ」を始めましたので紹介してみたいと思います。
まず、従来工法の作品。
「ぐい呑み」も「湯呑み」も「自然木」の持つ、それぞれの香りを生かす様に「亜麻仁油」や「荏胡麻油」で表面処理をしてきました。
これはこれで良いのですが、「飛騨春慶塗り」の様な表面処理の「うつわ」を見るにつけ『あんな感じも良いなぁ』と思ってました。
しかし、私は子供の頃から「漆」には耐性が無くて・・・。
残念ながら「ウルシ」に触ろうものなら、かぶれてしまうのです。
それじゃぁ『「漆塗り」に近い仕上げは出来ないか?』と考えました。
本職で色々な木材に「ウレタン塗装」して、「デザイン・モデル」を制作してましたので塗装の知識や技術は有ります。
上の写真は、以前、自動車室内の加飾サンプルとして制作した物です。
この様に「ウレタン塗料」の「クリア(透明)」に「染料」を「調色」して塗装すれば、素晴らしい仕上がりになります。
ただ、今回は普通に「ウレタン塗料」で塗るより、もっと「漆塗り」に近い仕上がりを狙ってみました。
何を使うかと言いますと「カシュー」と言う「合成漆塗料」を使います。
「合成漆塗料」と言う様に、かなり見た目の仕上がりが「漆塗り」に近くなります。
色々な色の有る「カシュー」ですが、私は「クリヤー(クリア)」と「透(すけ)」を使います。
「クリヤー」は普通に言われる「クリア」とは違って、薄い黄色をしています。
「透」は薄茶色で、本来の「漆」の色だそうです。
「カシュー」は「カシューナッツ」の殻から抽出した成分に、色々な成分をプラスして作られています。
本物の「漆」が湿度で固まるので「漆室(うるしむろ)」が必要なのに対し、空気中の酸素を取り込む「酸化重合」で固まります。
なので、普通の「塗料」と同じ扱いで済むので、扱いが楽です。
当然「合成漆塗料」ですから、かぶれません!(笑)
私の使い方は「刷毛塗り」します。
ただし「透」は色が濃いので「刷毛塗り」による「色むら」が出やすいので、「塗装ガン」で均一になる様に塗ります。
「刷毛塗り」は「刷毛」で塗って乾かし(1日くらい)、翌日、800番の「耐水ペーパー(水を付けて削る紙やすり)」で表面を滑らかにして、また「刷毛」で塗ります。
これを好みの色味になるまで、何回も繰り返します。
「カシュー」は非常に粘度の高いトロトロの塗料ですが、あまり溶剤で薄めず20%くらいにします。
普通の塗料は塗料を伸ばす為に溶剤を使うイメージですが、「カシュー」の「刷毛塗り」の場合の溶剤は『乾燥を遅らせ「刷毛目」を出さない為』という感じです。
ただし「ぐい呑み」は、中は塗りません。
これは元々の工法と同じく、酒を注いだ時の木の香りを活かしたいからです。
何回も『塗っては磨き(削り)』を繰り返していくと、こんな感じになります。
しっとりと濡れた様な見た目で、本物の「漆塗り」の様でしょ?
飾っておくだけの工芸品なら、これで十分なのですが、実際に「ぐい呑み」に酒を注いで楽しんだり、「お椀」に食べ物を入れて使うとなると「カシュー」には一つ問題が有ります。
「カシュー」は見た目は素晴らしいのですが「食品衛生法」に適合していないので、「ぐい呑み」に酒を注いで楽しんだり「お椀」に食べ物を入れて使うとなると「ダメ」なんです。
なので、もう1工程必要になります。
「食品衛生法」に適合した塗料で表面を「コーティング」します。
「カシュー」のメーカーに相談したところ「食品衛生法」 に適合した「ステロンTXL2800」を薦めていただきました。
これを写真の右端の「塗装ガン」で「コーティング」します。
「コーティング」と書きましたが、要は「クリア塗装」をもう1層掛ける訳です。
なお「塗装ガン」で塗らなくても、塗って乾かして「耐水ペーパー」で削って「コンパウンド」で磨いて仕上げる、「カシュー」の工程と同じ様にするなら「刷毛塗り」も可能です。
ここからは、今回の工法で仕上げた最近の作品を紹介します。
左が「栗材のお椀」で、右が「杉材の菓子皿」。
「栗材のお椀」はわざと「節(ふし)」の有る所を使って面白みを出してます。
「自然木」が材料ですので「ヒビ」が有ったりしますが、塗装して仕上げるので問題無く仕上がります。(「ヒビ」は、正直「旋盤」で削ってみないと分からないのです。)
「杉材の菓子皿」も木目の面白さを狙って「節」の有る部分を使ってます。
「杉」の様な柔らかい素材でも、塗装を行う事で表面に強度を与える事にもなります。
「杉材のぐい呑み」。
素材からの「材取り」の位置で、それぞれ面白い木目が出ています。
先にも書いた様に、酒を注いだ時に木の香りを生かす為に中は塗っていません。
なお「塗料」の匂いも塗って1週間も経てば匂わなくなりますし、酒を注いでも木の香りしかしません。
「桑材の湯呑み」。
「桑」の肌は荒くて、そのままでは中身が滲み出して来そうなのですが、塗装をする事でそれも無さそうです。
「桑」は以前の記事にも書いた様に「高血圧」に効果があるそうです。
なので「お茶」を入れた際に「桑」の成分が出て来る様に中を塗っていません。
でも、「桑材の湯呑み」は見た目に拘り過ぎた感も有ります。(笑)
と言うのは、「桑」は使い込むほどに薄い黄色から茶色に変わっていくそうです。
なので、色味は自然の変化に任せて、「食品衛生法」に適合した「透明ウレタン塗装」だけで良いのかもしれません。
「塗装」を行う工法を取り入れた事で『こんなの作ってみたいなぁ』と思う案件が増えました。
「稲刈り」は終わったとは言え、まだまだ、「農作業」や環境づくりの「草刈り」や本業が忙しいですが、少しでも時間を見つけて制作していこうと思っています。